つくるふたり おいしい往復書簡 四通目:焼きオクラの胡麻和え

香川の農家さんと京都の料理家さんで交わされる食材とレシピの往復書簡、四通目。料理家・庄本さんから、農家・香川さん宛に返事が届いた。

一通目 サニーレタス
二通目 サニーレタス焼
三通目 オクラ

こんにちは、庄本です。香川さん、サニーレタス焼きを作ってくださって、ありがとうございます!お好み焼きとはまた違う、サニーレタスの魅力が詰まった味わいだったかと思います。

京都は湿気がじとっと纏わりつくような暑さです。そちらはいかがでしょうか。どうぞ熱中症に気をつけて畑仕事なさってください。

オクラって気持ちいいくらい、どんどん実が成りますよね。農園を借りていたことがあるんですが、畑に行く度にオクラがびっくりするほど硬く、大きくなっていて、食べごろを逃すこともしばしばありました。

香川さんの元気なオクラを受け取りました。プリッとした感じと、立派なうぶ毛が美しいです。ちょっと細長くて丸さやなのが、お母様の代から繋いてきたオクラの品種の特徴なんですね。

リクエストしていたオクラの花も同封して下さってありがとうございます。ハイビスカスのように立派に咲くオクラの花を見ると、子どもの頃の、ある夏の日のことを思い出します。

昼さがりの台所で、まるでままごとかのように、母が黄色い花を刻んでいました。それを見つけた私が「これは何?」と聞くと、「これはオクラの花でね、食べられるんだよ」と母。私は信じられず、「嘘だー、、」と思いました。緑色のオクラに、こんなにきれいで大きな花が咲くことが想像できなかったんです。でも、母の手元では包丁で刻んた花びらが、オクラのように粘りを持っていたんです。

この時、雷が落ちるような驚きと共に「この花はオクラと一緒なんだ!」と理解したのを覚えています。

母は、先に切っておいたオクラと花を合わせ、ポン酢で和えて食卓に出してくれました。緑のオクラとうす黄色い花びらがきれいに混ざり、涼しげで食欲をそそります。花びらを口に運ぶと、オクラと似たような、野菜らしい味がしました。

子どもころ、花が食べられることが嬉しくて、オクラの時期になると「今日花はないの?」と、度々祖母や母に聞いていました。オクラの花を食べられるのは、育てている人の特権ですよね。

今回作ったのは、「焼きオクラの胡麻和え」。一般的な胡麻和えと違って、オクラを焼き、煮切りみりんを使うことで温かい一品になります。つい冷たいものを食べてしまいがちな夏に、胃を労ってくれます。

焼きオクラの胡麻和え
・オクラ:5本
・塩:ひとつまみ
・胡麻:大さじ2
・みりん:大さじ1
・醤油:小さじ1
・生姜:少々

まずは、オクラの根本の下ごしらえ。へた部分のうぶ毛が硬いときは、それを取るように剥いていきます。へたの部分も食べられるので、切り落とさずに残しておきましょう。 手でオクラを回しながら、4センチ程度に、斜めに切っていきます。この大きさにすることで、軽快な食感が楽しめ、斜めに切ることで舌触りが良くなります。へた部分が硬いときは、火が通りやすくなるように縦半分に切るのがおすすめです。

フライパンに油大さじ1 をひき、弱火でオクラを炒めていきます。ひとつまみの塩を振ったらそのまま置き、焼き目がついたらひっくり返します。この塩は余計な水分を出し、旨味を凝縮させるためのものです。

待っている間に、すり鉢で胡麻を擦ります。押しつぶすというよりは、胡麻を弾けさせるような気持ちですりこぎを回します。すり胡麻でも代用できますが、ぜひ、つぶさないように擦ったごまを味わってみてください。

ごまをすったすり鉢に煮切った味醂、醤油を入れ、生姜をすりおろし、焼いたオクラを入れ、優しく混ぜたら完成です。 オクラの花は生のままちぎって添えてみました。

オクラの花を知った時の衝撃と喜びを丁寧に思い返すと、それは「野菜は植物である」という事に気がついた経験でもありました。食べられるものと食べられないものを区別しているのは私たち人間の都合であって、このオクラも野菜である前に、花が咲き実がなる植物であること。私たちはその一部を頂いている、そんな発見が驚きと喜びとなって表れていたんじゃないかと思います。

実家では、オクラの根元部分は切り落とし、星型に切って食卓に出てくることがほとんどでした。でも、野菜を植物と捉えると、また見方が変わってきます。食べられないと思っていた部分が食べられるものだと気がついたり、包丁や火の入れ方次第で食べられるようになることもある。オクラは、そんなことを私に教えてくれました。

今回はオクラを余すことなく食べることに意識を置いてみました。是非、残暑のオクラも楽しんでみてください。

(文:庄本彩美、写真: 五十嵐邦之、編集:小林繭子)

庄本彩美(文)
1988年生まれ、山口県出身。料理家、「円卓」主宰。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。京都府在住。
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五十嵐 邦之(写真)
1989年新潟生まれ。フォトグラファー。京都造形芸術大学卒業。京都の制作会社にて約千組の結婚式を撮影。 2018年よりフリーで活動。現在は広告、WEBを中心に写真と映像で幅広く活動中。
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小林繭子

瀬戸内通信社 編集長/ライター、コピーライター:愛知県出身。12年ほど東京で暮らし、2016年に小豆島、2019年に高松へと移り住む。ライティング、IT企業営業事務、ミヤモト惣菜店広報&BARタイム担当など、気持ちの赴くままいろいろ。豊島美術館、李禹煥美術館が好き。

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