つくるふたり おいしい往復書簡 三通目:オクラ

香川の農家さんと京都の料理家さんで交わされる、食材とレシピの往復書簡、三通目。農家・香川さんから、料理家・庄本さん宛に返事が届いた。
一通目 サニーレタス
二通目 サニーレタス焼

庄本さんこんにちは、香川です。「サニーレタス焼き」、初めて聞いた料理でした。切り口の緑色がとてもいいですね。どんな料理かな、とゆっくり口に入れると、適度な葉っぱの歯ごたえと柔らかな食感。サニーレタスの存在感がしっかりと残り、シンプルで素材そのものを味わえる。

私の育てた気持ちがサニーレタスから庄本さんに伝わり、「この子が目いっぱい輝く料理を」と考えてくださったのが伝わってきました。ありがとうございます。庄本さんはきっと、野菜の声を聴きだすことができるのだと思います。私も野菜と接するときはしっかりと愛情を込めて…と改めて思いました。

 

梅雨が明け、香川は夏日が続いている。香川さんの夏野菜を求めて、畑へ伺いました。

「夏前までは人参が忙しかったです。最近はトマトが順調。雨が降ると実が裂けるんですが、今年は雨が多いわりにきれいに育ってくれて。トマトを狙ってキジが来るようになりました。くちばしでつつかれると落ちてちまうんですが、そのくらいはキジにあげちゃう。防止ネットを張る方がずっと大変なんでね(苦笑)」

香川さんを最近悩ませているのは、雑草。野菜たちの栄養を奪う雑草の成長は暑さと共に著しく、毎日のように草刈りをしても、すぐに追いついてくるのだそう。

「最近はYouTubeでも勉強を始めました。草刈り機にプラスチックの紐を組み合わせて雑草を刈る方法を見て、早速実践しているところです。うまくいったんで、しばらく続けてみようと思います。YouTubeは見始めたら時間がなんぼあっても足らんね、最近は必要なものだけを見るようにしています」

畑に出ると、うす黄色の花が咲いているのが見える。オクラの花だと香川さんに教えてもらった。恥ずかしながら、オクラの花が咲くことも、花が咲いた後に実ができることも知らなかった。夜から早朝にかけて開花するため、昼過ぎの畑では少ししぼんでいる。

▲開花後、花と入れ替わりに実が成るオクラ

「オクラは強い野菜で、苦労することはほとんどありません。芽が出てしばらくはひょろひょろとか弱く、数十センチほど。夏の暑さと共にぐ―っと伸びて、最後は私の背丈を超えて2メートル近くになります。オクラはどんどん実が成って、毎日1~2センチほど大きくなる。おいしそうなサイズを超えないよう、雨だろうと風が強かろうと毎日一つずつ、たくさん収穫します。それがオクラの最大のしんどさ(笑)」

「オクラは、母から種を分けてもらいました。母は30年前から畑をやってる大先輩。雑草対策として、午前中は『草けずり』を一生懸命やってますね。雑草の芽が出る前に土を削っていくんです。昔の人がやっている畑は、雑草が一つもないくらいきれいですよ」

香川さんのお母さんは、昔からずっとオクラを育ててきた。「母が誕生日を迎えて90歳になったばかりなんです、記念に写真を撮ってもらえます?」と香川さん。

▲香川さんと、お母さん

二人は毎日それぞれの畑に出て、夕方には畑を切り上げて一緒に近くの温泉へ。食卓には、お互いの作った新鮮な野菜が並ぶ。

「母はスーパーに行かなくてもいいくらい、沢山の種類を作っています。家からすぐの畑で季節の野菜が採れて、新鮮なものがいつでも食べられる。これほどいい生活はありません」

「オクラは普段、酢の物に入れたり、毎朝飲むグリーンスムージーに入れますね。とろっとして、ちょうどいいのど越しになるんですよ。初夏の今はリンゴ、バナナ、自分の畑のビーツやキュウリもいれます。オクラの声をどんな風に料理にしてくれるのか、庄本さんのお返事を楽しみにしています」

今回の香川さんからのお手紙は、お母さんから受け継ぎ育てたオクラ。香川から京都の庄本さんへ、お届けします。

 

香川 政雄
1951年香川県生まれ。60歳までメーカーの営業職として勤め上げる。定年退職後に香川県立農業大学校で一年間勉強した後、有機栽培のよしむら農園で自然農法を学ぶ。2012年から「かがわ農園」を始める。無理をして腰や膝を痛めた経験から「健康第一」を掲げ、無理なく農業を続ける生活を心がけている。「自分の野菜を食べた人に元気になってもらいたい」そんな思いから紫人参やパクチー、ビーツなどの野菜も作っています。香川さんの野菜は高松市内であれば春日水神市場SANUKISで購入可能です。(仕入れ状況により、販売が無い日もあります)

小林繭子

瀬戸内通信社 編集長/ライター、コピーライター:愛知県出身。12年ほど東京で暮らし、2016年に小豆島、2019年に高松へと移り住む。ライティング、IT企業営業事務、ミヤモト惣菜店広報&BARタイム担当など、気持ちの赴くままいろいろ。豊島美術館、李禹煥美術館が好き。

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